「連獅子」
ここは文殊菩薩が住むという天竺の霊地清涼山にあるという神変不思議の橋、石橋の近く。そこへ手獅子を携えた狂言師がやってくる。狂言師たちは親獅子が仔獅子を谷底へ突き落し、仔獅子が這い上がってくる姿を舞で表現するが、やがて舞い遊ぶ胡蝶に誘われるように去っていく。
清涼山の麓では浄土宗の僧遍念と法華宗の僧蓮念が出くわし、旅の道連れと喜び合うが、宗派が異なることを知ると言い争いを始める。一陣の風が吹き寄せると、二人は獅子が出現するのであろうと恐れ慄き、互いに手を取り慌ててその場を去っていく。
そして、間もなく石橋には親獅子と仔獅子が現れる。
「らくだ」
フグに当たって頓死した通称”らくだ”の馬太郎。仲間の半次は、弔いの金を用立てようと、紙屑買いの久六に声を掛けるが、らくだの家には売るものは何も無い ――。困った半次は久六を家主のもとに使いに出し、通夜の酒肴を出さないと、死人を担いでカンカンノウを躍らせるぞと脅す。ところが家主は、らくだが死んだとあれば祝いたいと言い、その上死人のカンカンノウは見たことがないので初物を見たいものだと言いだす始末。これを聞いた半次はらくだの馬太郎の遺体を引き起こし、嫌がる久六に負ぶわせて、ふたりで家主のもとへ向かう……。