この世界で、ぼくは ひとりぼっちじゃなかった。 ストップモーション・アニメーションの世界に新たな傑作が登場。
ママと二人暮らしの少年イカール。ある日、不慮の事故でママは帰らぬ人となってしまう。事故を担当した警察官・レイモンは、ママがつけた“ズッキーニ”という愛称を大切にするイカールを不憫に思いながらも、孤児院「フォンテーヌ園」に連れて行く。
クラスメイトはリーダー格のシモンら5人。入所当日から手痛い洗礼を浴びるズッキーニは、「ママのところへ帰りたい」と園長に訴えるが「それは無理なの。ママはお空に行ったでしょ」と静かに諭される。
ズッキーニの心の傷を知ったシモンは他の子どもたちも複雑な事情を抱えながら園生活を送っていることを明かす。それ以来、ズッキーニは心の痛さを共有する友としてシモンたちと打ち解けていく。
そして、園に新しい入園者カミーユがやってくる。カミーユはズッキーニと意気投合し、園を照らす太陽のような存在になっていく。
季節はめぐり、冬が到来。園の子どもたちは、スキー合宿に出かける。ダンスパーティーや雪合戦で盛り上がる子供たち。深夜、眠れないズッキーニとカミーユは、こっそり宿を抜け出した。月明かりの銀世界の中、カミーユは言う「ここに来て、あなたに会えてよかった」。
そんなある日、カミーユの叔母が、扶養手当欲しさに姪を引き取ると言い出し、園に乗り込んできた。「同居するなら死ぬ方がまし」というカミーユに、「絶対行かせないよ」と誓うズッキーニ。子供たちはある作戦を立てるのだった。
2016年のアヌシー国際アニメーション映画祭で最優秀作品賞と観客賞の2冠を射止め、第89回アカデミー賞では長編アニメーション部門にノミネート、フランスのアカデミー賞であるセザール賞では最優秀長編アニメーション賞とともに、実写映画を押さえて、最優秀脚色賞を受賞した本作。
監督、脚本を務めたクロード・バラスは、本作品が長編デビューの今最も期待されるアニメーション作家。ジル・パリスによる原作に魅せられ、大人向けの原作を世界で虐待にさらされる子どもたちへの応援歌として脚色。子どもたちの豊かな想像力を信じる思いに貫かれた物語に、大人も子どもも夢中になり、心をわし掴みされずにはいられない。