透明にならなくては息もできないこの街で、きみを見つけた
看護師として病院に勤務する美香は女子寮で一人暮らし。日々患者の死に囲まれる仕事 と折り合いをつけながら、夜、街を自転車で駆け抜け向かうのはガールズバーのアルバイト。作り笑いとため息。美香の孤独と虚しさは簡単に埋まるものではない。
建設現場で日雇いとして働く慎二は古いアパートで一人暮らし。左目がほとんど見えない。年上の同僚・智之や中年の岩下、出稼ぎフィリピン人のアンドレスと、何となくいつも一緒にいるが、漠然とした不安が慎二の胸から消えることはない。
ある日、慎二は智之たちと入ったガールズバーで、美香と出会った。美香から電話番号を聞き出そう とする智之。無意味な言葉を喋り続ける慎二。作り笑いの美香。 店を出た美香は、深夜の渋谷の雑踏の中で、歩いて帰る慎二を見つける。
「舟を編む」で知られる石井裕也監督の長編第12弾。石井監督が、「いま最も新しい表現者」として注目を集める最果タヒ氏による現代詩集を映画化。
ヒロインの美香に抜擢されたのは新人・石橋静河。看護師をしながら夜はガールズバーで働き、しっかり地に足をつけた生活を送りながらも、不安と孤独と不機嫌を胸の奥に抱えている美香を全身で演じきる。そんな美香と出会う慎二に池松壮亮。工事現場で働きながら、社会に適応しきれない自分にもがく青年の姿を、稀有な存在感で演じる。