その世界には自分を知っている人がいた-
春、卒業を控えた伊純は悩んでいた。不本意な成績で終わってしまった陸上の県大会。あの時出せなかったパーソナル・ベストを出したい。
このままでは東京へ転校なんて出来ない。伊純は、毎日放課後にタイムを測っていた。だが、そんな伊純の行動は、県大会で勝った同級生への当てつけだと周囲には受け止められていた。
卒業式当日、ふらりとたどり着いた海で“時のカケラ”を拾った伊純の前には、見たこともない風景が広がる。そしてポッピン族のポコンが現れる。ポコンは伊純と心が通じ合っている“同位体”だった。
伊純が迷い込んだ場所は“時の谷”。ポッピン族は、様々な世界の“時間”を司る一族。ところが、その“時間”がキグルミという謎の敵のせいで危機に瀕しているという。
“時の谷”には伊純と同じく時のカケラを拾った少女たちがいた。みな悩みを抱えたまま時の谷へとやってきていた。
そして伊純と同様、その傍らには同位体のポッピン族がいた。彼女たち時のカケラの持ち主が心を一つにしてダンスを踊ることで、時の谷を守ることができ、元の世界に戻ることもできるという。
だが5人目の少女・沙紀はみんなと踊ることを拒絶する。「私は元の世界になんか戻りたくないから」その言葉に伊純の心はうずく。
「私だって元の世界に戻って前にすすめる自信なんてない-」
中学3年生の春、悩みを抱えた少女たちが、奇跡の出会いを体験する。住んでいる地域も、家庭環境も違う5人。
出会うはずの無かった彼女たちが、出会い、そしてぶつかりあう。それは、それまで目をそらしていた自分の心と向かい合うこと