羽生善治を追い詰めた伝説の棋士・村山聖。病と闘いながら全力で駆け抜けた29年の生涯を描く奇跡の実話。
1994年、大阪。路上に倒れていたひとりの青年が、通りかかった男の手を借りて関西将棋会館の対局室に向かっていく―
彼の名は村山聖[さとし]。現在七段、“西の怪童”と呼ばれる新世代のプロ棋士だ。聖は幼少時より「ネフローゼ」という腎臓の難病を患っており、無理のきかない自らの重い身体と闘いながら、将棋界最高峰のタイトル「名人」を目指して快進撃を続けてきた。
そんな聖の前に立ちはだかったのは、将棋界に旋風を巻き起こしていた同世代の天才棋士・羽生善治。すでに新名人となっていた羽生との初めての対局で、聖は必死に食らいついたものの、結局負かされてしまう。
どうしても羽生の側で将棋を指したいと思った聖は上京を希望。体調に不安を抱える聖の身を案じ、家族や仲間は反対するが、師匠・森信雄は将棋に人生すべてを懸ける聖の背中を押す。
東京―髪や爪は伸び放題、本やCDやゴミ袋で足の踏み場もなく散らかったアパートの部屋。酒を飲むと先輩連中にも食ってかかる聖に皆は呆れるが、同時にその強烈な個性と純粋さに魅了され、いつしか聖の周りには彼の情熱を支えてくれる仲間たちが集まっていた。
その頃、羽生善治が前人未到のタイトル七冠を達成する。聖はさらに強く羽生を意識し、ライバルでありながら憧れの想いも抱く。そして一層将棋に没頭し、並み居る上位の先輩棋士たちを下して、いよいよ羽生を射程圏内に収めるようになる。
そんな折、聖の身体に癌が見つかった。「このまま将棋を指し続けると死ぬ」と医者は忠告。しかし聖は聞き入れず、将棋を指し続けると決意。もう少しで名人への夢に手が届くところまで来ながら、彼の命の期限は刻一刻と迫っていた…
「東の羽生、西の村山」と並び称されながら、名人への夢半ばで倒れた“怪童”の一生を描いたノンフィクション小説「聖の青春」が、『ひゃくはち』『宇宙兄弟』でヒットを飛ばした俊英・森義隆の手により映画化。
主人公・村山聖を演じるのは、主演作多数、人気実力を兼ね備える俳優・松山ケンイチ。驚異的な役作りで精神面・肉体面の両方から村山聖の真実にアプローチ。聖の最大のライバルであり、松山が本作の“ヒロイン”であると語る羽生善治を演じるのは、東出昌大。今なお棋界の頂点で活躍する実在の人物という難しい役どころを、徹底した役作りで見事に演じる。
この2人の緊迫感と臨場感あふれる対局シーンは本作最大の見どころだ。